行知学園日本語教師養成講座

大日方勝弘さんにインタビュー!「IJEC副代表が語る、日本語教師の働き方とこれから〜DXと国家資格化で何が変わる?〜」

更新日:2024/08/27

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IJEC副代表大日方勝弘さん

大日方勝弘さんプロフィール
1974年生まれ。IJEC(国際日本語研修協会)副代表。
職歴:
・前職 会社員(金融投資業界)8年
・日本語教育業界歴:19年目
主な経歴:
・IJECサイト運営
・日本語教師研修、就職フェア等の企画・運営
・企業・個人日本語研修事業(EPA等、政府日本語研修事業含む)
・職業紹介事業・就職支援(日本語教師・外国人)
・一般社団法人 全国日本語教師養成協議会(全養協)理事


皆さんはIJEC(アイジェック、国際日本語研修協会)をご存知でしょうか? 日本語教師の求人情報をサイト上で発信したり、講習会を開催したりと、日本語教育業界における様々な支援活動を行っている団体です。今回は、そのIJECの副代表である大日方勝弘さんに「日本語教師の働き方と未来」をテーマにお話を伺いました。

20年近くにわたって日本語教育業界に関わり、支援してきた大日方さんが見る「日本語教師のこれから」とは?

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日本語教師の国家資格化に期待すること

日本語教師は2024年4月に国家資格「登録日本語教員」になりました。様々な制度変更についてどのようにお考えですか?

日本語教師の待遇改善や社会的地位向上という視点で見ると、国家資格化はとてもいいことだと思います。いまだに「日本語教師は日本語をしゃべれればできる」と思っている人もいますから。国家資格になれば、まずは社会の見る目が変わる。そして、受け入れ側である日本語学校としても、国家資格を持っている先生をいいかげんな労働環境で迎えることはできないでしょう。悪質な経営を行っている学校が淘汰され待遇改善につながるきっかけになるのではないかと思います。

また今回施行された「日本語教育機関認定法」では、適切な日本語教育機関であるかどうか、自己点検だけでなく今後は第三者評価が努力義務として、推奨されている点も大きいです。自分たちの学校を客観的に評価され、それを公表するわけですから、「やっているつもり」は通用しなくなると思いますね。全ての学校が一斉に変わるということはなくても、良質な教育機関の土台作りにつながるのではないかという期待値は大きいです。

世界地図の前でほほ笑むIJEC副代表大日方勝弘さん

日本語教師の就職事情と求められる力

日本語教師の就職事情についてお伺いします。日本語教師の求人は増加していると聞きますが、大日方さんはどのように見ておられますか?

おっしゃる通り、現在は、超極端な売り手市場と言えるでしょう。ただ誤解がないように言いますと、資格を取っただけでどこでも仕事ができると思ったら、それはまた別の話です。認定日本語教育機関に選ばれるようなトップ日本語学校では、厳正な採用試験が行われます。そうした環境で働きたいというなら、まず実力をつけることですね。

そのためにどのようなことをすればよいですか?

まずやってほしいのは、学校の規模にこだわらず、現場に入ること。非常勤講師でもバイトでもいいですから、練習ではなく、実際に授業経験を重ねることが重要だと思います。次に、ICTスキルを磨くこと。最近はオンライン授業が一般化してきていますので、ZOOMを使いこなせたり、Googleフォームを自分で作れたりといったICTスキルがある方は、仕事の選択肢の幅が広がるので強いですよ。

そのほかに求められる能力や適性はどのようなものが挙げられますか?

例えば、町内会や公民館なんかと接点を持っていたり、地域の特性を把握していたりといった、地域性を持っているとポイントが高いと思います。外国人が地域社会の一員として生きていけるよう指導するのも日本語教師の大切な役割ですから。

そのほかにも、常識的な言動ができるか、社会性があるか、などの点も採用試験では重視されるでしょう。そうした意味では、豊かな社会経験がある人ほど有利かもしれません。要は、日本語教育の知識やスキルがあればいいというわけではないんですね。日本語教師としての付加価値が重要なのです。養成講座を終えた後も、自己研鑽を積んで、努力し続けてほしいですね。

ホワイトボードに文字を書くIJEC副代表大日方勝弘さん

「いい日本語教師」とは?

大日方さんの考える「いい日本語教師」とはどんな人ですか?

色々お話ししましたが、究極は、笑顔で楽しく、分かりやすい授業ができる教師だと思いますよ。どんなにすごい知識を持っていても、授業中に学習者が寝てしまったら意味がありません。教師は優れたエンターテイナーであるべきだと言えるでしょう。

どうすればそんなエンターテイナーになれますか?

やっぱり、様々な社会経験を積むことだと思います。多くの人とコミュニケーションを取ったり、何かを成し遂げたりする経験を重ねることで、近づけるのではないでしょうか。

若い人には「新しい発想での授業」を期待したい

かといって、社会経験が浅い若い人に来ないで欲しい、というわけではないですよね。

もちろんです。むしろ若い人にも、新卒でも、どんどん日本語教師を目指してほしい。社会経験って、なにも特別なことをしなければいけないわけではなくて、例えば大学生であればアルバイトやインターンシップなどでもいいんですよ。地域性なんかは、自分で意識して地域や社会の動きを勉強すればいいと思います。

では、日本語教師を目指す若い人にどんなことを期待しますか?

日本語学校の重鎮やベテラン教師に遠慮しないで、柔軟な発想で新しい授業を提案してほしいですね。例えば、もう教案を書いて授業をするというスタイルそのものが古いのかもしれない。そこから見直すくらいの画期的な発想が欲しいです。それこそICT技術やAIを駆使すれば、どんどん新しい授業を作り出せると思いますよ。

養成講座の授業では、延々と例文について話し合っていたりしますけど、ChatGPTを使えば、例文なんてすぐに何十個も作ってくれます。「AIが出てきたことで教師がいらなくなるんじゃないか」という人もいますが、むしろ新しいツールを使いこなすことで業務がスマートになり、日本語教師の働き方改革にもつながるのではないでしょうか。

ベテランの先生は、若い人や新しい文化と融合する姿勢を

受け入れ側のベテランの先生に期待することは?

そういう若い人たちや新しい文化を敬遠しないで、受け入れて、歩み寄っていく姿勢でいてほしいですね。また、これまで培ってきた素晴らしい技術や知識を、若い人、業界全体に還元していただきたい。面白い授業の展開法とか、テキストを効率的に処理する知識など、その先生しか持っていない知見や技術って山ほどあるんです。

それ以外にも、日本語教師の素晴らしさ、やりがいについても、ベテランの先生から若い人に発信していただけるとすごくいいのではないかと思います。

大日方さんが若い人に伝えるとしたら、どんな点が日本語教師の素晴らしさだと思いますか?

日本語教師は、全世界の人と同じ空間でつながることができる、すごい仕事だ、という点です。日本語学校の教室は多文化共生社会の最前線の空間です。大変な面もあるけれど、日本社会の未来を担っている現場の第一線で働けるというのが、この仕事の醍醐味だと思いますよ。

ホワイトボードの前でほほ笑むIJEC副代表大日方勝弘さん

今後の目標は、良質な教育機関を一覧化していくこと

大日方さんの今後の目標を教えてください。

今一番実現したいと考えているのは、IJECのサイトに、認定日本語教育機関の正確な情報を一覧にして掲載していくことです。毎年更新して、生きた日本語学校の情報をわかりやすく開示していきたい。

認定日本語教育機関というのは、国から認定される質の高い教育機関です。その生きた情報を一覧化することは、日本語を学びたい留学生にとっても、良質な日本語学校で働きたい日本語教師にとっても、大きなメリットがあるはずだと思います。

そういう風に考えたきっかけは何ですか?

自分自身日本語教師ですし、養成講座でずっとキャリアサポートをやってきたので、皆さんには勤務先の学校選びを大切にしてほしいと心から思っています。

一方で、冒頭でもお話しましたが、日本語学校の経営者側の意識改革も重要です。日本語教師の価値をきちんと理解して、彼らを大切にできる経営をしてほしい。良質な日本語学校の情報を公平に提供していくサイトの存在が一つの浄化作用となり、全体の質向上につながればと考えています。

インタビューに応えるIJEC副代表大日方勝弘さん

日本語教師を目指す人へメッセージ

日本語教師を目指す人へメッセージをお願いします

「やろう」と思ったら、今すぐ始めましょう。人生は限られています。「リタイアしてから」「もう少し年取ってから」ではなく、今すぐ第一歩を踏み出してほしいと思います。

まずは、きちんとした養成講座を選ぶところからです。表面的な情報で選ぶのではなく、本当に自分に合った養成講座を多面的な視点から選べると良いですね。繰り返しになりますが、学ぶ側にとっても学校選びは重要です。IJECではそうした意味でも、皆さんに公平に、日本語教師に関する情報を出していきたいと考えています。

「日本語教師ナビ」編集部コメント
インタビュー中、特に力を込めてお話しされていたのが「日本語教師の環境改善」に関する話題でした。「IJECのサイトはほとんど自分で更新しているから大変。でも、公平で確実な情報を発信するために努力したい」と語る言葉の端々に、日本語教師の未来に込める熱い思いを確かに感じました。

日本語教師ナビとしても、今後一層有益な情報を発信し、業界に貢献したいと思うきっかけとなるお話しでした。国家資格化を契機に、日本語教育業界の質の向上が図られることを期待したいです。


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