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新山忠和さんプロフィール
略歴:
一般社団法人全国日本語教師養成協議会 常任理事・事務局長
一般社団法人応用日本語教育協会 理事・事務局長
公益社団法人日本語教育学会 代議員
楽器メーカーから日本語教師に転職。1995年日本語教師養成講座在学中より日本語教師となる。1996年日本語教育能力検定試験に合格。放送大学大学院文化科学研究科修士課程修了。日本語教師養成講座の講義のほか、テスト開発、教材開発にも広く携わっている。国内外での講演も多数。
「日本語教師養成講座および日本語教師の質的向上」を目指し、日本語教育界を幅広く支援している全国日本語教師養成協議会、通称「全養協」。独自の検定試験や、研修、説明会などを実施し、様々な角度から日本語教育に関わる人々をサポートしています。
今回は、全養協常任理事・事務局長を務められている新山忠和さんに、日本語教師、そして日本語学校の行く末について、幅広くお話を伺いました。
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やはり、日本語教師が社会的に認められるということが一番大きいと思います。まだまだ、日本語教師の本来の役割や仕事内容は一般的には知られているとは言えませんから。
例えば、つい先日異業種交流会でお会いした方に「日本語教師なら英語ペラペラなんですね」と言われました。日本語教育関係者の方ならすぐお分かりになると思いますが、この反応には2つの誤解が生じています。1つは、日本語学習者が、英語を母語とする人たちが中心だと思われていることです。国際交流基金による統計を見ていても、日本語学習者はアジア圏が8割を占めています。もう1つは、日本国内で教える場合は、日本語で日本語を教える方法が基本だ、ということです。そのため、授業で英語を使用するわけではありません。
これは単なる一例ですが、改めて日本語教師の認知度の低さを実感する機会でした。国家資格化されることで、こうした誤解も解消され、日本語教師の役割や価値が周知されていくと期待しています。
今回の国家資格化は、あくまで国内の認定日本語教育機関で日本語を教えるための資格であることが前提です。今後は、海外で活躍している日本語教師の方にも広げていくことが重要だと考えています。
残念なことに、海外で日本語を母語とする日本語教師の比率は下がってきているんですね。私たちも海外出張するたびに、現地の日本語教育機関の方や、大学の先生などに「日本人の先生を派遣してください」というご要望を頂きますが、 なかなか期待に応えられていません。国内の日本語学校が教師不足で逼迫しているのと、内向き志向もあって、海外で教えたいという日本語教師が減っているということが背景にあると思います。
ただ今後を考えたときに、海外の日本語教育の活性化というのはとても重要な課題です。せっかく専門性の高い日本語教師が認められる機会ができたのですから、国家資格を持った先生が海外で教える、あるいは今現在海外で教えている日本語教師の方々が登録日本語教員資格を取る、というように、海外を見据えた展開を期待したいですね。
認定法が施行されて、2029年3月末までの経過措置期間中に、認定日本語教育機関として認められないと、事実上運営できなくなるわけですから、認定日本語教育機関として認められる、というのが喫緊の課題だと思います。
ただ、日本語学校は、社会情勢に大きく左右されるものです。ここ数年で言うと、丸2年全く留学生を受け入れられなかったコロナ禍は、各校に非常に大きな影響を及ぼしました。留学生数が減り、非常勤の先生も離職した学校も多かったと思います。そう考えると、認定日本語教育機関に求められる「2029年4月までに生徒40人に本務等教員1人」の配置基準は、容易に対処できるものではないと思います。
また、コロナ禍の間収入がなかったため、認定日本語教育機関の申請で問われる財務基盤の面が厳しいという学校もあるでしょう。今後、コロナ禍で被った痛手をリカバリーし、どうプラスに持っていけるか、がポイントになると思います。
現在、日本語能力試験(以下JLPT)のN1合格や、日本留学試験(以下EJU)のスコア目標の達成などを掲げて運営している日本語学校が多いと思うのですが、こうした発想ややり方を転換、つまり、パラダイムシフトしていく必要があります。なぜなら認定日本語教育機関の申請にあたり、教育課程に「日本語教育の参照枠」を織り込んでいく必要があるからです。
「日本語教育の参照枠」は、日本語を使って「何ができるか(Can do)」、そして「日本語を使って社会にどのように参加していけるか」を主軸に作られた言語スタンダードです。ここで提示されている5つの言語活動「聞く」「読む」「話す(やり取り)」「話す(発表)」「書く」で各校の教育の目的の達成を目指して、教育課程を編成していかなくてはなりません。JLPTやEJUは基本的に「聞く」「読む」を測る試験なので、この対策をメインにやっている日本語学校は、意識改革をする必要があります。
そうすると、自ずと評価方法も変わってくるはずです。小テストやペーパーテストで知識を評価してきた学校は、多角的に様々なパフォーマンスを評価するための取り組みが求められます。
大学院あるいは大学などの合格の条件としてJLPTやEJUの基準が設けられていれば、進学コースの学校の場合、それは意識せざるを得ません。ただ、そもそも日本語学校というのは、学習者にとっての1つの通過点でしかないのです。「聞く」「読む」しか受験では問われなかったとしても、進学したら、課題や研究発表で「話す」「書く」などの力は必ず必要になります。日本語学校は、彼らの進学後、さらにその先を見据えて、社会での自己実現のために本当に必要となる力を身に付けられる場所でないといけないですね。
そして教員研修を初任、中堅、ベテランと段階的に組織的に整備する必要もあります。 どれも言葉で言うのは簡単なことですが、教育現場って変化を余り求めない方々が多いと思いますので、意識を変えていくために、じっくり取り組んでいく必要があると思います。
また、外国人が日本社会で活躍していくために、企業と日本語学校の連携をより強固にしていくことも重要だと考えています。日本語学校が質の高い外国人材の供給元だということを、もっと広く企業に認知してほしいです。そのためには、例えば、一般社団法人外国人雇用協議会のような、外国人材の採用に前向きな企業が集まる団体と、日本語学校が連携することも必要でしょう。就職支援の面でも、単なるエントリーシート添削や面接指導といったノウハウだけでなく、本質的なマッチングを実現できるような指導が効果的ではないかと思います。
1つは、文部科学省や国内の登録機関とのパイプ役を担っていくことです。お話ししました通り、日本語教育機関認定法が施行されて国家資格化したと言っても、まだまだ課題が山ほどあります。解決していくためには行政との連携が欠かせませんが、どうしても、一教育機関が直接文科省とやり取りする、というわけにはいかないでしょう。私どもが受け皿になり、意見をまとめて行政につなぐ、そして施策を業界に伝える、というパイプ役になることで、よりスムーズに制度移行を進められるのではないかと思います。早速、2024年12月には、日本語教育課のご担当者をお招きし、「登録日本語教員養成機関、登録実践研修機関 申請に関する説明会」を実施しました。
2つ目は、「登録実践研修機関・登録日本語教員養成機関で教える先生を対象にした研修です。特に実践研修で、現場に立てる国家資格の教師を育てるために、それを指導する先生の研修はどうあるべきか。私どもには「日本語教師の実践力」を軸に20年以上かけて培ってきたノウハウがありますから、それを生かした研修ができるのではないかと考えています。
3つ目は、なんといっても登録日本語教員のなり手を増やすこと。特に新卒の方ですね。国家資格になったわけですから、新卒の方にもぜひ日本語教育の現場に就職していただきたいと期待しています。
そのためにも、日本語教育の意義とやりがい、そしてキャリアアップを図るにはどういう方向性があるのかといった職業観も含めて、全養協として広く発信していきたいですね。
求められる素質としては、このあたりかと思います。
・人が好きな人、人とのコミュニケーションが好きな人
・異文化交流に興味がある人
・物事を多面的に見られる人、客観性がある人
・柔軟性がある人
・成長意欲がある人
中でも、「異文化交流を楽しめる」というのは重要な要素だと思います。
先日タイに出張したのですが、現地の方から冷やしたキュウリみたいな、シャリシャリした食感の果物をいただいたんです。「何の果物ですか?」と聞いたらなんと「マンゴー」でした。日本人が持っているマンゴーのイメージは、オレンジ色の甘く柔らかい果物だと思いますが、全然違う種類がタイにはあるんですね。ここでは果物のことですが、習慣や考え方の違いを感じることもありますよね。こういった体験こそが、まさに「異文化体験」だと感じました。
私たちは、普段言葉で切り取った世界を生きていますが、その言葉の背景には、異なる文化や社会が広がっています。多様な言葉や文化の持つ役割を深く理解し、その違いを楽しめ、自分自身の内面を広げていける、そんな人が、日本語教師に向いているのではないでしょうか。
全養協の顧問を務められていた故水谷修先生は、日本語教師を医者に例え、「診断と治療」という言葉で日本語教育を表現されました。「目の前の学習者の日本語を学ぶ目的、日本社会でどういう活動をしたいのか。そして、その人の現状や必要な学習は……という風に、一人ひとりの状況や目的を把握して、学ぶべき内容を多角的に考える。そしてそれを望ましい形で実践できる。それが日本語教師だよ」と、繰り返しおっしゃっていました。私自身、この言葉に尽きるのではないかと常々思っています。
今、日本語教育業界はパラダイムシフトの時期を迎えています。2029年3月までの経過措置期間は、本当にドラマティックなものになるだろうという予感がしています。
別の側面から見れば、新しい日本語教育業界を作る絶好の機会です。これから、一緒に新しい日本語教師像をつくっていきましょう。日本語教師の未来が良いものになると信じて、ぜひ飛び込んできてください。
「日本語教師ナビ」編集部コメント
日本語教育界が抱える複雑な問題や現状について、非常にわかりやすくお話しくださり、編集部一同とても勉強になりました。
「日本語教育界の課題」というと、新聞などでも「日本語教師不足」について頻繁に取り沙汰されています。今回もそのあたりのお話が中心になるかと思い臨んだのですが、予想以上に多彩な面から日本語教師を取り巻く世界についてお話しを展開してくださり、視野を大きく広げてくださったと感じています。
日本語教師ナビとしても、一面的に日本語教師の話題を紹介するのではなく、様々な側面から、皆様のためになるような情報を発信していきたいと思います。
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