行知学園日本語教師養成講座

日本語教師の養成講座体験記 第2回
モチベーション維持の秘訣

更新日:2023/10/12

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日本語教師の養成講座体験記 第2回モチベーション維持の秘訣 

4月から日本語教師養成講座を受講中の島津さん(仮名)に、講座で学ぶ内容や学校生活などのお話を伺う、養成講座体験記の第2回。養成講座でどんなことを学べるのか、学校の様子がどんなものなのか、日本語教師養成講座の体験談を密着取材していきます。
講座受講開始からもうすぐ3ヶ月。今回はモチベーション維持の秘訣を聞きました。

養成講座を受講してみたくてどんな内容なのか気になる方、日本語教師に興味があるという方必見の体験記です。

島津さん

島津 綾さん 日本語教師を志す、20代前半の女性。
現在は東京近郊にひとり暮らし。
仕事をしながら資格取得を目指すため、土曜日コースを選択。1年かけて修了を目指す。好きなものは歴史。


勉強方法の模索

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編集部(以下、編集): 以前お話を伺ってから1ヶ月半が経ちましたね。学校には慣れましたか?

島津さん(以下、島津): 慣れました!いつも一番前に陣取っているので、先生も名前を憶えてくれたみたいで。

編集: 今も勉強は毎日続けてますか?

島津: はい、仕事終わりに図書館に寄って帰ります。だいたい家に帰るのは夜9時くらいです。でも最近は中間テストの時期なのか、混んでるので、家に帰って勉強することが多いです。

編集: ノート作りも続けてますか?勉強方法は以前と変わらず?

島津: 万能ノート作りは今も続けてるんですけど、最近勉強スタイル変えたんですよ。将来、ちゃんと生徒に説明できるようにならなきゃいけないなって。
ホワイトボードを買って、実際に教えているみたいに、口に出しながら勉強してます。

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編集: 実践的な勉強方法ですね!

島津: そっちの方が楽しいんですよ。時間かかるんですけど、自分で覚えるから、土曜日に学校へ行ったとき、休み時間に他の人にも説明できるんですよね。

万能ノートとホワイトボード、それと問題集をとにかく読み込んでいます。自分に合う勉強方法を探してますね。
あとは、学校で友達と教え合ってます。

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VTRを使った実習の効果

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編集: 前回楽しみにしていたVTRの実習はどうでしたか?

島津: すごい緊張しました!

編集: 自分で授業も用意するんですか?

島津: まず先生から、「動詞4つのうちどれかを実演してもらいます」って案内があって、そのうちどれを実演するかは、当日のVTR撮りの前に言われます。だから、1つだけヤマ勘張ってもダメなんです。4つ全部きっちり、どういう話し方をするのかとか、レアリア(※)っていうんですけど、どんな教材を用意するかとか考えてこなきゃいけなくて。とりあえず4つ全部、レアリアを用意して、何を話すかとか、立ち位置とか、どういう板書の仕方をするのかとかを用意しました。

編集: どんな風にVTR実習を行ったんですか?

島津: VTRを撮るときはほぼ全員参加したんですけど、VTRを見るときは、先生と1対1の面談形式で行いました。
実習は、全員が生徒役で1人だけ先生役かっていうとそうじゃなくて、1人は先生役で、あと4人か5人を生徒役としてランダムで選出されて授業をしました。

先生役の方から質問を振ったり、生徒役にも発声してもらったりして、生徒役も学習者になりきる。
生徒役がうまく発音できなかったり、話が詰まったら、先生役は「もう一度やろうか」っていうようなことを、まわりの状況を見ながら臨機応変に判断しなきゃいけない。
実際やってみたら、自分で思ってるよりかは話せてたかな、と。

編集: 他の人の実習内容も見てたんですね。他の人のやり方をみてどう思いましたか?

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島津: 他の人のをみてるとやっぱり、上手だなー、ここいいなーっていうのが、いっぱいあります。マネしなきゃなーっていうのもたくさん出てきて面白かったです。

かっこいいなーって思ったのが、レアリアを使うっていうときに、ただ新聞をもってきて「これは新聞です」っていうんじゃなくて、各国の新聞をもってきて、「これはフランス語の新聞です」って生徒の出身国であろう国の新聞を実際に持ってきて、生徒の関心をこっちに持ってくる手法。いろんな国の新聞よく集めたな、とも思いました。人によっておもしろい教材をもってきたり、自分の色を出してくる人がいたり、いいなって思いました。

編集: VTR実習が終わって、通常の実習もありましたよね。ビデオで見たことは活かせてますか?

島津: 活かせてますね。今回のVTR撮りの目的が何だったかって考えると、自分が教師として教壇に立ったときに、自分がどんな癖があるのかっていうのを初めのうちに発見できることなので。
それから、学んだ知識をちゃんとアウトプットできているかっていうのを確かめるいい機会でもあります。自分の悪い癖も発見できて、アウトプットもまずまずできていたから、よかったかなって。

編集: 例えばどんな癖を発見できました?

島津: ふたつあって、ひとつは、焦っちゃうこと、それともうひとつは、焦ると声量が大きくなっちゃうこと。

焦っちゃうっていうのは、「教案に沿わなくちゃ」「ちゃんとやらなきゃ」ってなっちゃうんですよね。生徒ができているところなのに、教案に沿って「もう一回やってみようか」って言っちゃうとか。
焦ると声も大きくなっちゃって、うるさくなっちゃう。ビデオで客観的に自分を見たからわかったんですよね。こういうのは早めに自覚できて本当によかったです…!

※レアリア
生教材、または実物素材ともいう。原則的に教材として加工されていない、実際の生活の中で使われている素材を教材として使用したもの。日常生活で実際に使用されているもので学ぶことで、現実の文化に対面し、文化や習慣の理解などの効果がある。
例としては、レストランのメニュー、街中の看板、新聞や雑誌の記事、カタログ、チラシなど。

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紹介!今回の養成講座のナカミ

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編集: 養成講座ではどんなことを日々学んでいるのか、内容が気になります。
最近習ったような内容で、驚いたこととか、新鮮だったことがあれば教えてください!

島津: いっぱいありすぎて(笑)
音声学では、なんで外国人の人が日本語の発音が難しいのかっていうのがわかったのが今回の驚きですね。

たとえば、外国人の学習者が「おかあさん」ていう単語を発音すると「おかさん」になっちゃう場合があるんです。長音、伸ばす音が発音できないとしたら、それはどうしてなのか。その原因は、多分日本人の長音が聞き取れてないからなんですよね。

モーラ(※)って言って、「オ・カ・ア・サ・ン」は5つの音なんですけど、学習者には「オ・カ・サ・ン」の4つの音にしか聞こえてないんですよ。だから、そのときどうやって教えればいいかっていうと、一音ずつ手を叩いて「オ、カ、ア、サ、ン」とやる。それで、「これは5つだよね。」って確認してもらう。それから同じように、「オ、カ、サ、ン」とやって、「あなたの発音は4つだよね」って自覚してもらう。

そういう指導が自分で考えられるようになったのがすごい嬉しいし驚きです!

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編集: 一般的な日本人では気づかないですよね。

島津: 気付かないし、わたしが実際に留学してたときに、日本語教えてほしいって言われて教えたこともあるんですけど、発音の矯正だけはどうしてもうまくいかなくて、理由もよくわかってなかったんですよ。

それが今回の養成講座を通して何が原因だったのか、原因を踏まえたうえで、どうすればきちんとした指導ができるのか、っていうことをちゃんと考えられるようになったのがすごい嬉しい。

過去の自分に教えてあげたい!これならすぐに使える技ですし。ほかにもいろんな技をその都度聞くようにしています。

編集: 実習方法とかは変わりましたか?

島津: まだそんなに変わってないです。グループワーク。

変わったことといえば、実習の前に宿題が出るようになったことですね!今まで「復習は、するのがベター」っていうスタンスだったのが、宿題が出るようになりました。

実習を迎える前に、自分で課題の到達目標を考えてきたりとか、ある構文をこれから教えるというときに、対話文を考えてくるとか。いままでは授業内でやってたことが宿題になって、どんどん自分で考えて発見していかなきゃいけないことが増えてきました。

実習の時間は、宿題部分の授業を実際に受けて、自分がいかに日本語ができてないかっていうのを自覚する時間になってます(笑)。

順を追って教案づくりに向かって行ってるんだなっていうのが実感できます。
この前の授業では、ある構文を教えるときに使えそうな例文・学習者に対して初めて提示する例文を考えてきなさいって形で宿題が出ました。

※モーラ
拍とも呼ぶ。基本的にかな1文字分の音の長さを表す単位。日本語の音を数えるときに無意識に使っている場合が多く、俳句の「五七五」などは拍を数えたもの。
ただし、「しゃ・しゅ・しょ」のように、1文字目の子音と2文字目の小書きのかなを同時に発音するものは1拍となり、また、長音「ー」(伸ばす音)、促音「っ」、撥音「ん」もそれぞれ1拍に数えられる。
例としては、「紅茶」(こうちゃ)3拍、「ピーナッツ」5拍、など。

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モチベーション維持のコツ

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編集: 講座を受講し始めてからもうすぐ3ヶ月経ちますが、なにか気持ちに変化ってありますか?

島津: もっと勉強しなきゃなって(笑)
試験の勉強することももちろんなんですけど、2週間前にあったテストがあって、もっと勉強しなきゃなって思いました。

テストは、授業をよく聞いて練習問題をきちんとこなしていれば100点取れるようなテストなんですけど、自分は100点取れなくて。
自分の中でライバルと思ってる人がいるんですけど、その人が100点ばっかりとってて、あー!悔しい!って。

編集: どんなテストでした?

島津: この前のテストは、90分間で今まで習った音声学と文法と教育指導法に関する内容を網羅した内容でした。

自分の中で一番悔しかったのが音声学。まだ答えをもらってないんですけど、日本語教育能力検定試験に似たような問題で、自分で答えを見つけられないのがちょこちょこあったので、悔しいです。

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編集: なるほど。島津さんのようにモチベーションを高く維持する秘訣ってなんでしょうね?

島津: 一人ライバルを用意すること(笑)
競争相手がいると思えば、頑張れますね。

あと定期的なイベントもモチベーションの維持に役立ちます。さっき言ったテストとか、この間のVTR実習とか。テストは2ヶ月に1回くらいのペースであるようなので。

あとは、わたし本当に土曜日の授業毎回楽しみなんですよね。
わたしの場合、東京出てきて、地元の友達とはほとんどバイバイしてこっちにいるんです。
だから、仕事以外で人と話す機会って、プライベートの話とか、夢のこととか、趣味の話とかできる友達があんまりなくて。土曜日がほんとに楽しいんですよ。

いろんな人に刺激もらえるし、いろんな話できるし、夢は一緒だし、めっちゃ楽しいんですよね。授業ももちろん楽しいんですけど。

編集: クラスメイトとの関係はどうですか?

島津: 一緒に頑張ろう!って感じです(笑)

みんな、教え教えられって関係ができてるので、すごくいいです。わたしもしょっちゅう教えてもらってるし、私が教えることもあるし。

この前は、今わたしは検定試験の問題を解いているので、こんな難しい問題があったんだよって言って、周りのみんなに解いてもらって、私が解説するっていう。

あと友達と習った内容で問題を出し合うとかもしてます。

編集: これから楽しみにしていることってありますか?

島津: まだ習ってない科目が始まること。
対照言語学とか。全然どんなのか想像ついてないんですけど。

あとは、日本語史、言語学概論、異文化間教育とか。ロールプレイも入ってきますね。

編集後記 日本語教師は、日本語の知識のみならず、日本語を教えるために必要な教授法の知識、正しい発音のための音声学など、専門的な知識が求められます。
そのため、学ぶものに応じて自分に合う勉強方法を模索するのは大事なことです。実際に日本語教師になると、知識だけではなくきちんと教えられる技術が必須なので、島津さんのように実践的な練習を自分で考える工夫も効果的だと感じました。

日本語教師養成講座のカリキュラムは、開講している学校によって様々な工夫が見られます。島津さんの通っている学校では、自分の行う実習をビデオ撮影し確認する、VTR実習があります。
島津さんは、ビデオを通して、自分が授業する姿を客観的に見つめることができ、自分の持つ癖を発見できました。そして、実習を通し、他受講生のユニークな取り組みを参考にするなど、受講生同士で刺激を与え合っているようです。

講座開始から3ヶ月近く経った現在、授業の内容はより専門的になってきたようです。中学校、高校では習わないような、音声学や日本語の指導法などで使われる専門的な用語が、島津さんの口からこぼれてきました。
つくづく、「日本語教師というのは、日本語が話せる人なら誰でもできる職業ではないなぁ」と感じた編集部です。

日本語教師養成講座は、一度始まると半年から1年をかけて修了を目指す講座です。定期的に催されるテストや、競争相手を設定することで、モチベーションを維持することができそうです。
お互いに励まし合い、一緒に講座を受講する仲間がいることも、講座を続ける原動力となりそうです。

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